美容室の税務調査では何が調査されるのか
調査官は見聞きしたものちょっとした雑談などから情報を収集する専門家です。 「調査当日には聞かれたことのみ答える」ことが重要です。 確認が必要な事項については、即答できなくても大丈夫です。 むやみやたらに、聞かれていないことまでしゃべってしまわないように気をつけましょう。
そもそも税務調査って何?
税務調査が行われる場合には、原則として事前に納税者に対し税務調査の連絡が行われます。 これを一般に「事前通知」といいます。
顧問税理士がいれば、この事前通知は税理士に対し行われます。
平成26年の国税通則法の改正により『税務代理権限証書』に『調査の通知に関する同意』欄ができました。 ここにチェックマークをつければ、税務署は納税者に対してではなく、税理士に連絡をします。
税務代理権限証書
この税務調査の事前通知は、調査手続きの透明性・納税者の予見可能性を高める観点から、税務調査に先立ち行われます(通法74の9)。事前通知により通知される内容は以下のとおりです。
事前通知事項(国税通則法74の9、国税通則法施行令30の4)
- 実地調査を行う旨
- 調査を開始する日時(いつ)
※調査日程の変更は柔軟に対応してもらえます。
- 調査を行う場所(どこで)
- 調査の目的(なんのために)
- 調査の対象となる税目(何を)
- 調査の対象となる期間(どれくらいの期間)
- 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
- 調査の相手方である納税義務者の氏名及び住所又は居所 (納税義務者が法人である場合には、名称および所在地)
- 調査を行う税務職員(複数の場合は代表者)の氏名および所轄官署(だれが調査するか)
- 調査開始日時又は調査開始場所の変更に関する事項
- 事前通知事項(4 から7)以外の事項について非違が疑われることとなった場合には、その事項に関し質問検査等を行うことができること(国通法 74 の 9 ④の規定)
なお、調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合には、課税の公平確保の観点から、事前通知を行わないケースもあります(通法74の10)。
担当官について、事前に調べておく
一般に、税理士事務所では、調査担当者の名前をもとに「税務職員配属便覧」で所属部署や職名、担当調査官の経験年数をチェックします。 今回の調査がどのレベルの調査になるか想像し、準備を進めます。
税務調査の対象になりやすい事象・特徴
美容室・ヘアサロンの場合、以下のような状態になると税務調査を受けやすくなります。 ①年間売上高900万円前後の年があった ②年によって利益率の変動が大きい ③総合的にみて所得が少なすぎる年がある ④副業を事業所得として申告し、他の所得と損益通算し、還付を受けた
以下、詳細をみていきましょう。
①年間売上高900万円前後の年があった
税務署が調査対象を選定する際に、無作為・機械的に年間売上高900万円程度の事業者を選んでいます。
これは、年間売上高が1000万円を超えると消費税の納税義務が生じるため、事業者が売上を意図的に操作し、900万円程度に過少に申告をしていることが多いからです。
したがって、売上高900万円前後の年が数年継続すれば、無作為に選定されるため一定の確率で調査対象に選定されやすくなります。
②年によって利益率の変動が大きい
美容室・ヘアサロンのビジネスは、現金商売です。
飲食業などと同様に、現金商売はそもそも税務調査の対象に選ばれやすくなります。
また、美容師のお仕事は、労働集約的であり、原価も売上の10%~15%程度しか発生しません。
したがって、年によって利益率の変動が大きい場合は、調査の対象に選ばれやすくなります。
③総合的にみて所得が少なすぎる年がある
個人事業者は事業で稼いだお金で生活しています。
年間の生活費を賄える程度の所得金額は、月に30万円程度だとすると、年間360万円の所得がなければ、貯金を取崩して生活していることになります。
したがって、申告された所得金額が年間の生活費を賄える程度の所得金額を下回る年が続くと不審に思われ、調査の対象となりやすくなります。
なお、②と③に共通ですが、ある年度の売上高や所得に特殊事情がある場合は、決算書の「本年中における特殊事情」蘭に具体的な事情を記載しておくのがポイントです。
④副業を事業所得として申告し、他の所得と損益通算し、還付を受けた
副業については、所得区分がよく問題になります。
「事業」所得であれば他の所得と相殺(損益通算)できますが、「雑」所得となる場合は他の所得区分の所得と損益通算できません。
給与所得を得ているような方が、副業した場合、おおむね「雑」所得となることが多いです。
「雑」所得となれば、他の所得と相殺(損益通算)できないことに注意が必要です。
したがって、事業所得とした所得が雑所得ではないかの調査を受けやすくなります。
調査のために用意する書類
①過去3~5年分の以下の会計証憑・データ類 ・決算書・申告書 ・総勘定元帳 ・売掛帳及び買掛帳 ・現金出納帳 ・期末棚卸資産の明細表 ・売上の関係書類(POSデータや、現金売上の領収書控えなど) ・仕入及び一般管理費の関係書類(請求書・領収書) ・賃金台帳及び源泉徴収関係契約書及び議事録
②その他の申告書作成のもとになった証憑書類
参考:『自主点検ガイドブック』、『自主点検チェックシート』
これらは「公益財団法人 全国法人会総連合」が作成し、 国税庁の後援で、日本税理士会連合会が監修しています。 このような視点で日ごろから点検できておくとよいでしょう。
http://tax-compliance.brain-server2.net/compliance/units/
税務調査への対策3つ
事前にしっかりと準備しておくことが重要です。
①法定保存書類を整理、保管しておく!
書類を誤って破棄しないように最低でも7年間は保存しなければなりません。
②そもそも税務調査になっても大丈夫なように税理士に経営管理業務をマルっと依頼しておく!
税務調査はいつくるか予見できませんが、ほぼ確実にやってきます。 そんな自然災害のような事象を頭の片隅に置きながら、 クリエイティブな施術業務をこなすなんて正気の沙汰ではありません。
そもそも税務調査になっても大丈夫なように税理士に経営管理業務をマルっと依頼しておけば、そんな些末なことに頭のメモリーを取られることがなくなり、よりお客さまに対する接客に集中できます。
③Web予約・POSシステムを導入しておく!
美容室・ヘアサロンは現金商売です。 あえて現金売上とすることで売上を除外する誘惑にかられやすい商売です。
予約受付をすべてWebで行う、電話予約があっても、POSシステムですべて管理しておけば、業務が効率化しますし、売上が網羅的にシステムに入力されるため、調査時に売上の網羅性を証明しやすくなります。
また、キャッシュレス決済を積極的に導入することで、日ごろから現金を授受しないということもできます。
参考:美容室・ヘアサロン専用のPOSシステム「カッチブーン」
まとめ
美容室・ヘアサロンの場合、 ・年間売上高900万円前後の年が数年継続した、 ・年によって利益率の変動が大きい、 ・総合的にみて所得が少なすぎる年がある、 ・副業を事業所得として申告し、他の所得と損益通算し、還付を受けた場合 に税務調査を受けやすくなります。
こんなことまで考えながら、施術業務をするなんて、しんどすぎます。 ぜひ、専門家である私共にマルっとお任せください。
ご連絡お待ちしています。