こんにちは、小松啓(@EUREKAPU_com)です(プロフィールはこちらからどうぞ)。
1. 財務諸表だけをみても、企業のことは理解できない
会計をわかりやすくするWebサイトを運営していますが、実は(言われれば当たり前だけど)、会計データ(財務諸表)だけをみても、企業のことは理解できません。
このことは強調しすぎてもしすぎることはありません。
本Webサイトや自著「読まないで会計思考が身につく方法」は会計を学習するための本ですが、それと同時に同じくらい何が会計でわからないことなのかを理解しておく必要があります。
会計上、取引と識別・測定されなければ、仕訳(会計データ)に変換されません。
言い換えれば、会計ではその会社がもつすべての価値を財務諸表で報告していないということです。
2.企業の最大の経営資源はヒトである
そもそも、企業の最大の経営資源はなんでしょうか?
その最たるモノはヒトですね。
ただし、従業員とは雇用契約を結んでいるだけで、企業が所有しているわけではありません。
驚くべきことに、つい最近までヒトがヒトを所有することを容認していた時代もありました。
それが奴隷制です。
詳細はこちらの書籍「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福」が大変興味深い指摘をしています。
こちらのアニメーションもおすすめです。
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— Hardbound (@hardbound) 2017年4月21日
3. 企業の価値の源泉はデータそのものにシフト
ヒトの例ではなく、別の例をあげてみます。
もし、あなたが社会の仕組みを変えられるSNSアプリサービスを思いついたとします。
いてもたってもいられず、今の会社をその日に退職しました。
すぐに1000万を親戚中からかき集め、会社を設立し、アプリを1000万円で開発したとします。
初期の段階ではユーザーを集めるため、無料としました。
その結果、開始わずか1年で月間の利用者数が5000万人に成長しました。
今後もこの利用者数の成長はとまりそうにありません(夢のような状態ですね)。
無料アプリなので、ダウンロード時および使用時にユーザーに課金しません。
加えて、まだ広告などを表示していないので広告収入もなく、あなたの会社はこのアプリからは、1円も収益(売上)を獲得していないとします。
この会社の損益計算書は赤字です(注)。貸借対照表には何も価値のある資産はありませんよね。財務諸表はスカスカの状態です。
(注:この場合、会計的には将来収益獲得が見込めれば、費用収益対応の観点から開発に要した人件費などの経費を資産に計上できますが、まだ収益化していないので、開発費全額を費用に計上したとします。)
この場合であっても、このアプリを開発した企業には数百億円から数千億円の企業価値がつくことがありえます。
この会社がもつ価値とはなんでしょうか???
5000万人のユーザーデータがこの会社の価値です。
なぜかといえば、この会社はいつでも5000万人のユーザーに対して何らかのサービスを提供し、間接的に収益を上げることができますし、5000万人のユーザーデータを利用して、広告収入などですぐにでもお金に換えることができるからです。
この場合、この会社の本当の価値は、会計的に測定できる資産などではなく、ユーザーデータなのです。
他にも例えば、ツイッターアカウントのフォロワー数が何十万人といる著名人はいつでもそれをお金にかえることができますね。
いわゆる、「インフルエンサー」と呼ばれる方たちです。
4.まとめ
財務諸表だけをみても、企業のことは理解できません。
最大の経営資源であるヒトは所有できません。
そして、もはや財務諸表だけをみて、その企業がわかるほど、ビジネス自体が簡単ではなくなってきています。
とはいえ、会計データを読めなければ、最低限の合理的な意思決定すらできない恐れがあります。
ですので、会計がわかっていたほうがいいに決まっています。
だけど時間をかけず、「サクッ」と勉強したいですよね。
そんなあなたのために自著「読まないで会計思考が身につく方法」を出版していますので、よろしければどうぞ!
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!