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この記事を動画で解説しました!
アニメーションをつかってざっくりと解説していますので、まずはこちらから概要をつかんで仕訳を整理してみてください。
イントロダクション
これまで3回に分けて約束手形についてお話してきました。ここからは、為替手形についてお話します。
為替手形を振り出すことでクチヒゲ社長(A社)は、アゴヒゲ社長(C社)に支払わなければならない買掛債務とハート社長(B社)からもらうはずの売掛債権を相殺できます。これをやるために、為替手形を使います。
なお、約束手形の主要論点は、以下の3つでした。
- 【 5分でEureka!】アニメーションで絶対にわかる約束手形(1/3) ~振り出し→支払期日到来編
- 【 5分でEureka!】アニメーションで絶対にわかる約束手形(2/3) ~振り出し→裏書譲渡編
- 【 5分でEureka!】アニメーションで絶対にわかる約束手形(3/3) ~振り出し→割引編
為替手形とは
為替手形とは、手形の作成者(振出人)が、名宛人に対して、一定の期日に一定の金額を指図人(受取人)へ支払うことを委託する証券のことをいいます。
これで理解できた人はほとんどいないと思います。そのくらい為替手形ってわかりにくいです。今回は為替手形をざっと簡単にお話しします。
為替手形の設問を解くために必要な理解
為替手形の設問を解くためには、以下の理解が必要です。為替手形がわかった気になれない方はどこでつまずいたのかチェックすることをオススメします。
- 設問に使用される専門用語の整理(振出人、名宛人、指図人など)
- 誰の立場で仕訳処理を聞かれているのか(国語力)
- 商品売買取引における買掛金と売掛金の計上方法
- 約束手形の処理方法(要するに、手形債権が発生したひとは「受取手形」を使い、手形債務が発生したひとは「支払手形」を使うということ)
為替手形の取引概要
為替手形の定義をもっと具体的に言い換えてみる
以下の図解を使って言い換えてみます(文章は長いのでとばし、図解だけでもよいです)。
為替手形とは、手形の作成者(振出人)であるクチヒゲ社長(A社)が、手形の振出人が持つ販売先のハート社長(B社)に対する売掛債権と仕入先のアゴヒゲ社長(C社)に対する買掛債務とを相殺するために、売掛債権を持つ販売先のハート社長(B社)(名宛人)に対して、手形に記載した期日 (20XX年7月30日)に手形に記載した金額(200万円)を買掛債務を持つ仕入先 のアゴヒゲ社長(C社)(指図人)に、クチヒゲ社長(A社)の代わりに支払ってもらうように依頼し、ハート社長に渡した証券、これが為替手形です。
為替手形を簡略化した見本
多少はわかりやすくはなった気がしますが、言い換えたり、具体的に言われても、複雑なもんは複雑ですね。言葉による表現は、最後まで読みきったところでようやく全体を把握できるという特徴があるため、説明する要素が多い為替手形を理解するには言葉だけでは足りないかなと思います。ですので、文字に加えて動く図解(アニメーション)で一緒に確認しましょう!わからない人が近くにいたらこのリンクをシェアしてあげましょう!
為替手形の取引概要
まず、為替手形を振出す前提として、当社(八百屋:クチヒゲ社長)が仕入先(農家:アゴヒゲ社長)から掛けで商品を仕入れ、当社が販売先(レストラン:ハート社長)に掛けで販売しているとこから始まります。これ忘れがちなのですが、為替手形を理解する上で、とても大切な前提です。
クチヒゲ社長からみれば、今現在、売掛債権と買掛債務の両方もっていますね。
なので、この際、ハート社長(B社)に頼んで、クチヒゲ社長(A社)が売掛債権のお金を後でもらう代わりに、アゴヒゲ社長(C社)に支払ってもらったほうが楽だろうと考えます。
そこで、為替手形の登場です。
為替手形を振り出すことで本来、クチヒゲ社長(A社)がアゴヒゲ社長(C社)に支払わなければならない買掛債務とハート社長(B社)からクチヒゲ社長(B社)がもらうはずの売掛債権を相殺できます。これをやるために、為替手形を使います。
為替手形の取引概要 ~まとめ
為替手形の振出により、掛け債権・債務の関係が、登場人物別にどう変わるかに注目して上記の図解「為替手形 ~振出」をみてください。
- クチヒゲ社長(A社)からみれば、為替手形の振り出しによって、ハート社長(B社)に対しての買掛債務とアゴヒゲ社長(C社)に対する売掛債権が相殺される。
- ハート社長(B社)からみれば、為替手形の引き受けによって、クチヒゲ社長(A社)に対しての買掛債務が手形債務に変わる。
- アゴヒゲ社長(C社)からみれば、為替手形の受け取りよって、クチヒゲ社長(A社)に対する売掛債権が手形債権に変わる。
(興味ある方だけ)為替手形の必要性
そもそもなんで為替手形って必要なのか?これ、正直最初わかりませんでした。だって、どう考えても面倒ですよね、取引先の債権債務を自分の都合で相殺しようとしているので。ですので、全国銀行協会に電話して聞いてみました。
お話しした内容をまとめると要するに、為替手形の制度ができた当初は、銀行振り込みなどが未発達であり、決済手段が限られていた時代においては、名宛人(レストランを経営するハートさん)と受取人(農家を営むアゴヒゲさん)が近接した地域におり、一方で振出人(八百屋を営むクチヒゲさん)が遠隔地に存在している場合などにおいては、為替手形を使用し、3者間の支払いの手間を省略できたようです。しかし、今となっては銀行振込みなどは当たり前ですので、わざわざ販売先である第三者にお願いして自分の債務を手形で支払ってもらおう、なんて面倒なことは実務ではおこなれていないようです。実務上は、輸出入取引や資金の取立て(振出人と受取人が同一である自己受為替手形など)において、3者間ではなく、2者間での使用に限られるようです。
仕訳の処理を確認 ~まとめ
為替手形 ~掛け債権・債務計上
これは商品売買取引時の買掛金と売掛金の計上方法の確認です(そもそもなんだっけという方はこちら「売掛金」「買掛金」)。
為替手形 ~振出
ポイントは、ハート社長(B社)のもつ買掛債務が手形債務に変わるところです。言い換えると、約束手形は振り出した会社に手形債務が発生しましたが、為替手形の場合はクチヒゲ社長(A社)への買掛債務がアゴヒゲ社長への手形債務に変わることを承諾したハート社長(B社)に手形債務が発生します。
為替手形 ~まとめ(動画)※好きなところでStopし、確認できます
為替手形 ~為替手形の決済
これは約束手形の決済と同じなので、図解は省略します。
結論だけいえば、手形が決済されるということは、手形債務を持つ会社の当座預金口座から手形債権を持つ会社の銀行口座へ資金が移動し、それぞれの手形債権・債務が消滅することを意味します。ここは簡単ですね!
念のための確認ですが、振出人のクチヒゲ社長の売掛債権・買掛債務はハート社長が引受した時に相殺が確定したので、手形が決済されても処理がないのは明白ですね。
取引と仕訳の処理を確認 ~それぞれの立場で確認
まとめではそれぞれの立場を同時に見ました。ここでは、設問も確認しつつ、別々に見ていきましょう(内容はまとめのものと同じです)。
振出人の立場から
名宛人の立場から
指図人の立場から
【おまけ】「為替手形」は1級の範囲へ変更(2016年4月1日以降の試験より)
これまで日商簿記の3級の手形は、「約束手形」と「為替手形」がその出題範囲でしたが、為替手形は1級の出題範囲へ変更になりました。なお、「約束手形」は3級のままです。
あくまで推測ですが1級への変更理由は、手形取引そのものが実務でも見かけなくなってきていること(下図「手形交換高(単位:兆円)の推移」参照)、および手形の中でも為替手形自体がもともと輸出取引や資金の取立て(自己宛為替手形)などでしか使用されなくなってきており(3者間の決済手段として使われることが今ではほとんどない(為替手形がはじまった当初はあった)、加えてそもそもその流通量が少ないからではないでしょうか。
手形交換高(単位:兆円)の推移
最後の補足
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
問題によっては、振出人が仕入れを行うときに為替手形を振り出す場合もありますが、出題頻度は低いようです。
というか、そもそも為替手形自体は1級の論点となってしまったので、勉強しなくてもいいくらいの内容です。今回このように、結構な時間を使って図解を作成し、為替手形をわざわざ解説した理由は、これまで3級を学習した方にとっては、この論点が簿記へのコンプレックスを醸成するのに十分な論点であるためです。これを読まれた方の簿記コンプレックスが解消されることを願います。
目次一覧~解説編~
- 【 5分でEureka!】アニメーションで絶対にわかる約束手形(1/3) ~振り出し→支払期日到来編
- 【 5分でEureka!】アニメーションで絶対にわかる約束手形(2/3) ~振り出し→裏書譲渡編
- 【 5分でEureka!】アニメーションで絶対にわかる約束手形(3/3) ~振り出し→割引編
- 【 5分でEureka!】アニメーションで絶対にわかる為替手形 ~掛け債権債務計上→為替手形振出