【図解】返品権付きの販売(収益認識に関する会計基準の設例11)の解説

こんにちは、小松啓(@EUREKAPU_com)です(プロフィールはこちらからどうぞ)。

この記事では、「返品権付きの販売」について、設例を用いながら(収益認識に関する会計基準の設例11を参考にしつつ)、ざっくりと解説します。

1. 返品調整引当金(企業会計原則の注解18に例示列挙されていた)は廃止予定

従来から、返品調整引当金は企業会計原則の注解18においても例示され、広く実務でも見かける処理でした。

[注18] 引当金について(貸借対照表原則四の(一)のDの1項、(二)のAの3項及びBの2項)
 将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
 製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。
 発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。

「収益認識に係る会計基準」とその適用指針が公表され、適用指針の84項から89項に、返品権付きの製商品を販売した場合の取扱い、そのうち、85項に会計処理についての記載があります。

本会計基準を策定するにあたり、返品調整引当金が国際的な比較可能性の確保の観点から、「代替的な取扱」としては認められず、この会計基準を適用するにあたって、返品調整引当金は廃止されることになります。

2. 収益認識に関する会計基準の「返品権付きの販売」の会計処理のポイント

ポイントは3つあります。

  • 返品されないことが見込まれる製品および商品にかかる対価の額で収益を認識する(言い換えれば、返品されることが見込まれる製品および商品については、収益(売上高)として認識しない)
  • その代わりに、返品されることが見込まれる製品および商品については、その金額を「返金負債」として認識する
  • また、返金負債の決済時に顧客から回収する権利について「(返金)資産」を認識する

85. 返品権付きの商品又は製品(及び返金条件付きで提供される一部のサービス)を販売した場合は、次の(1)から(3)のすべてについて処理する([設例11])。
(1) 企業が権利を得ると見込む対価の額((2)の返品されると見込まれる商品又は製品の対価を除く。)で収益を認識する。
(2) 返品されると見込まれる商品又は製品については、収益を認識せず、当該商品又は製品について受け取った又は受け取る対価の額で返金負債を認識する。
(3) 返金負債の決済時に顧客から商品又は製品を回収する権利について資産を認識する。

何やら聞き慣れない名称「返品負債」と「返品資産」というものが出てきました。

3. 収益認識に関する会計基準の適用指針の設例11の前提条件の整理

設例を参考に、ハーバリウムの製造販売を営む当社が顧客にハーバリウムを販売する例で確認します。

この写真は私が試しに自作した「ハーバリウム」です。ハーバリウムとは、「植物標本」のことです。花材に使用したのは、スイートピーと梅の花です。

→関連リンク(作成中)

まずは、以下の前提条件の1から4までを図とともに、ご確認ください。

設例11の前提条件1

  • 当社はハーバリウムを(単価1,000円)100本販売する契約を顧客と結んだ
  • ハーバリウム100本を顧客のもとに届けたとき(ハーバリウムに対する支配を顧客に移転した時)に代金100,000円を現金で受け取った
  • 当社は通常、顧客が購入後未開封のハーバリウムを購入後30日以内に返品する場合、全額返金に応じる
  • ハーバリウムの製造原価は50,000円(1本あたり500円)
収益認識に関する会計基準の返品権付き会計処理の図解です

設例11の前提条件2

  • この契約では、顧客がハーバリウムを返品することが認めらているため、当社が顧客から受け取る対価は変動対価である
  • 当社が権利を得ることとなる変動対価を見積もるために、当社は、当該対価の額をより適切に予測できる方法として、期待値による方法(会計基準第51項)を使用した
  • その結果、ハーバリウム97本が返品されない(3本が返品されるだろう)と見積もった

51. 変動対価の額の見積りにあたっては、発生し得ると考えられる対価の額における最も可能性の高い単一の金額(最頻値)による方法又は発生し得ると考えられる対価の額を確率で加重平均した金額(期待値)による方法のいずれかのうち、企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いる(適用指針[設例 10]、[設例 11]及び[設例12])。

設例11の前提条件3

  • 当社は、本適用指針第25項の諸要因を考慮して、返品は自らの影響力の及ばない要因の影響を受けるが、ハーバリウム及びその顧客層からの返品数量の見積りに関する十分な情報を有していると判断
  • さらに、返品数量に関する不確実性は短期間(すなわち、30日の返品受入期間)で解消されるため、当社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の額 97,000円(=100,000円×97本(返品されないと見込む製品数))の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断(会計基準第54項)。
収益認識に関する会計基準の返品権付き会計処理の図解です

25. 変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いかどうか(会計基準第 54 項)を判定するにあたっては、収益が減額される確率及び減額の程度の両方を考慮する。収益が減額される確率又は減額の程度を増大させる可能性のある要因には、例えば、次の(1)から(5)がある([設例4]、[設例11]、[設例12]及び[設例13])。
(1) 市場の変動性又は第三者の判断若しくは行動等、対価の額が企業の影響力の及ばない要因の影響を非常に受けやすいこと
(2) 対価の額に関する不確実性が長期間にわたり解消しないと見込まれること
(3) 類似した種類の契約についての企業の経験が限定的であるか、又は当該経験から予測することが困難であること (4) 類似の状況における同様の契約において、幅広く価格を引き下げる慣行又は支払条件を変更する慣行があること
(5) 発生し得ると考えられる対価の額が多く存在し、かつ、その考えられる金額の幅が広いこと

収益認識に関する会計基準の適用指針 第25項

54. 第 51 項に従って見積られた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める(適用指針[設例 3]、[設例 4]、[設例 11]、[設例 12]及び[設例 13])。

収益認識に関する会計基準 第54項

[設例11] 返品権付きの販売
1.前提条件
(1) A 社は、製品 X を 1 個 100 千円で販売する100 件の契約を複数の顧客と締結し(100千円×100 個=10,000 千円)、製品 X に対する支配を顧客に移転した時に現金を受け取った。
A社の取引慣行では、顧客が未使用の製品Xを30日以内に返品する場合、全額返金に応じることとしている。
A社の製品Xの原価は60千円である。

(2) この契約では顧客が製品Xを返品することが認められているため、A社が顧客から受け取る対価は変動対価である。
A社が権利を得ることとなる変動対価を見積るために、A社は、当該対価の額をより適切に予測できる方法として期待値による方法(会計基準第51項)を使用することを決定し、製品X97個が返品されないと見積った。

(3) A社は、本適用指針第25項の諸要因を考慮して、返品は自らの影響力の及ばない要因の影響を受けるが、製品X及びその顧客層からの返品数量の見積りに関する十分な情報を有していると判断した。
さらに、返品数量に関する不確実性は短期間(すなわち、30日の返品受入期間)で解消されるため、A 社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の額9,700千円(=100千円×返品されないと見込む製品X97個)の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断した(会計基準第54項)。

(4) A社は、製品Xの回収コストには重要性がないと見積り、返品された製品Xは利益が生じるように原価以上の販売価格で再販売できると予想した。

4. 収益認識に関する会計基準の適用指針の設例11の会計処理の確認

顧客に対し、ハーバリウムを販売したときの会計処理は、次のとおりである。

  1. 返品されないと見込まれる部分の97,000円の収益を認識する(本適用指針第85項参照)
  2. 返品されると見込む製品X3本について、3,000円(1,000円×3本)の「返金負債」を認識(会計基準第53項)(本適用指針第85項参照)
収益認識に関する会計基準の返品権付き会計処理の図解です

これにかかる原価の処理は以下の通りです。

  1. 引渡した棚卸資産は50,000円(500円×100本)
  2. 返金負債の決済時に顧客からハーバリウムを回収する権利について1,500円(500円×3本)を認識(本適用指針第85項、第88項及び第105項参照)
収益認識に関する会計基準の返品権付き会計処理の図解です

5. まとめ

なにやら聞き慣れない「返品負債」と「返品資産」というものが出てきました。

返品を合理的に見積もって仕訳することは、理にかなっていそうです。
しかし、見積もりは実務ではとても面倒くさそうですね。
会計基準があたらしくなるときは大体そういうものなので、しっかりと趣旨なども基準を読んでみましょう!

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