こんにちは、小松啓(@EUREKAPU_com)です(プロフィールはこちらからどうぞ)。
結論からいえば、簿記資格取得のメリットは一般に以下の3つといえます。
- 数字で会社のビジネスを解釈できるようになる
- 就職や転職に有利になりやすい
- 他の会計系資格に向けた「踏み絵」として有効
最初に
そもそも、私は簿記の資格がすべての人に必要だとは思いません。
簿記は単なる数え方の話ですし、簿記の作法(仕訳のパターン)を身につけさえすれば、簿記は難しいものでもありません。
それはちょうど、話し言葉は、脳内にあらかじめインストールされていますが、読み書きについては、ある程度のパターン認識を行う訓練が必要なのと同じです。
ビジネス活動が多岐に渡るので、どうしても仕訳のパターンを覚えるのに時間を要します。
簿記検定資格をわざわざ取らなくても、財務諸表が読めさえすれば、多くの人にとってはそれで困ることはありません。
テレビから情報を取得するときに、テレビを見る方法されわかれば、テレビがどういう仕組みで製造されているかまでわかる必要がないのと同じです。
しかし、簿記検定資格を取得することで、自分の理解度を相対的に把握できるようになるという点では、取得しておいても損はありません。
財務諸表がどういう過程で作られるのかを理解することは、より深く企業の活動を理解することに繋がるはずです。
ということで、前置きが長くなりましたが、簿記資格取得のメリットをご紹介します。
1. 簿記資格取得のメリット
簿記資格取得のメリットは一般に以下の3つです。
- 数字で会社のビジネスを解釈できるようになる
- 就職や転職に有利になりやすい
- 他の会計系資格に向けた「踏み絵」として有効
具体的に順に確認してみます。
1-1. 数字で会社のビジネスを解釈できる
どんなビジネスも基本的には「安く仕入れて(買って)、高く売る」というシンプルな原則を一貫して追求します。
たとえば、八百屋で考えれば、できるだけ安くりんごを仕入れ、できるだけ高くりんごを売ることができれば、何も問題ありません。
りんご1つであれば、極めてシンプルなので、副業としてメルカリで販売するだけでおわる場合は単純でよいのですが、実際に本業としてビジネスを行う場合には、数字の管理を疎かにすれば、簡単に銀行預金残高は泡のように消えてなくなるでしょう。
一体どれくらい儲かりそうか、いま設備に投資すべきかなどを理解するには、数字のシミュレーションが欠かせません。
将来的に起業を志す方であればなおさらです。
ざっくりとでも数字のシミュレーションができなければ、そもそも銀行からお金も借りられませんし、投資家とのコミュニケーションもままならないでしょう。
もちろん、有能な参謀(CFO)が最初からチームにいれば問題ありませんが、常にリソースは限られている中では、自身で、ある程度ざっくりと数字で自社のビジネスや競合のビジネスが理解できなれば、成功をつかむことは簡単ではないでしょう。
もっとも、起業してしまえば、いやでも確定申告はしますし、銀行預金残高と毎日向き合うことになるため、ある程度、簿記資格を持っていなくても、最低限の簿記の知識が身につきます。
自社のプロダクトに集中しなければならないときに、些末な数字に囚われ、不安にかられてしまっては本末転倒ですので、簿記3級程度の知識と簡単な税金の仕組みくらいは知っておきたいところです。
なので、最低限、ビジネスをサバイバルする上で、早期の簿記資格取得はオススメできます。
1-2. 就職や転職に有利になりやすい
仕訳作業自体は、将来的にはAIなどに置き換わるといわれていますし、実際にマネーフォワードなどでは自動で仕訳がおき、あとはちょっとした修正で確定申告も1日でおわるということも少なくないようです。
本当に就職や転職に有利なのでしょうか。
簿記検定試験を受ける時間があれば、プログラミング言語を1つでも勉強し、何か自分でアプリをリリースした経験の方が企業からの受けもよいような気もします。
繰り返しますが、簿記は数の数え方の話なので、何かを生み出すわけではありません。よっぽど、成功しないかも知れないけど、誰か身近な友人や家族などに役に立ちそうなアプリを作ったほうが、私は良いと思います。
ただ、そこまで何か作りたいものがないとか、そもそもプログラミングに興味がなかったり、何がやりたいのかまだちょっとよくわからないけど、たまたま簿記とか会計に興味をもった場合には、簿記検定資格を取得し、企業にアピールする材料のひとつとすることは可能です。
AIで置き換わるといわれながら、実際に現場では経理人材が不足がちなのは事実だからです。
エクセルなどが普及しても、経理のしごとが減ることはなかったのと同じ様に、AIが普及しても求められるスキルのレベルが上がるだけで経理の仕事そのものはなくなりません。
むしろ経理+αのことが経理部にも求められることになります。
簿記は「仕訳」がすべてですので、早々に脳に仕訳のパターンを認識させて、検定試験をパスし、その先にあるものに早々に取り組みましょう!
1-3. 他の会計系資格に向けた「踏み絵」として有効
会計系の資格として、最難関といわれるのは、「公認会計士」と「税理士」です。
両者ともに、簿記は必須科目ですので、これらの会計系の資格に挑戦しようと考えている方はまず、簿記3級と2級まで受験することをオススメします。
簿記3級と2級を勉強する過程で、つまらなくなればやめればいいし、簿記がパズルみたいで面白いと感じることもあれば、最難関資格に挑戦してみてもよいと思います。
また、中小企業診断士やフィナンシャル・プランナーも会計系の知識への理解が要求されることから、それらへの耐性を図るのに有効でしょう。
ぜひ、他の会計系資格に向けた「踏み絵」として活用することをオススメします。
ちなみに、試験範囲が改正され、簿記2級でも連結会計がその範囲が加わったため、上場企業の決算書も読みやすくなるでしょう。
2. 簿記資格を取得するデメリットは何でしょうか。
ざっと記載してみましたが、これらを踏まえたうえで、ご自身の現在の状況や、モチベーション、ご自身の好みや目標と合致するかどうかを十分に検討する必要があります。
・数字で測れないことを軽視しがち(重要なことの多くは数字におとせない)
・簿記検定資格は必要条件であり、就職や転職において十分条件ではない
会計では、企業の全ての価値を測ることができないということを十分に知っておく必要があります。
何も資格取得にこだわる必要はありません。
資格予備校の記事を読めば、簿記検定試験が役に立つといわれますが、ご自身でよく考えてみましょう。
床屋にいって、髪を切った方が良いかを聞くのと同じで、資格予備校にいけば当然、受験を進められます。
Webで検索しても、受験教材を販売している企業のWebサイトであれば、いいことしか記載されません。
簿記2級まで取得までに平均して約100時間は勉強時間が必要といわれます。
その時間があれば、他にできることがけっこうあります。
簿記なんてその都度勉強するだけでも、実際にこまることはないはずです。
好きでやりたいことが他にあれば、迷わずそちらに100時間を費やした方が、専門性が深まりよりはずです。
関連して、以下の記事もご一読されてもよいかもしれません(再掲)。