こんにちは、小松啓です(プロフィールはこちらからどうぞ)。
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おそらく、この記事にたどりついた方は、簿記3級をTACや大原など専門学校の講座にお金を払って取得すべきか、それとも市販のテキストを買って独学で取得すべきかを検討されている方、もしくはすでに「独学でやるぞ!」と決意されている方だと思います。
この場合、まず以下のことに関して情報を集めたいのではないでしょうか。
- 簿記3級の合格率
- 必要な総勉強時間と勉強期間
- 具体的な勉強方法
- おすすめのテキスト(独学の方)※本記事では触れません
この記事を見終わるころには


日商簿記検定の3級の合格率
まずは敵を知らずして、攻略することはできません。
彼を知り己を知れば百戦殆うからず
出所:「孫子」
日商簿記検定の3級の合格率は約30%
簿記検定試験の過去15年の合格率の推移です。一般にその合格率は30%程度と言われています。実際のデータを確認してみましょう。平均合格率は30%でした。
しかし、年度によってばらつきがあり、最も高い年は36%、最も低い年度は24%であり、この10%の幅は運の要素が強そうです。

ちなみに、直近5年間の合格率の平均も30%ですので、過去から継続して30%前後になるように配点などが設定されていることがうかがえます。
しかも、簿記3級の試験は年3回あり、通年で平均30%前後になるように調整されます。
たとえば、以下のグラフの2012年の2月の合格率は37%であり、6月は32%でした。2月の合格率が高くなったので、11月は難しくなります。反対に、2016年を確認してください。2月は合格率が21%と難しく、6月は27%でした。ということは、、、11月は簡単になりますね。このことから、簿記3級試験はいつ受験することになるのかということが合否に影響を与える試験ということがわかります。

日商簿記検定の3級の実受験者合格率は約40%
平均合格率は30%なのですが、実は受験申し込みをしてから、実際に受験しない人という人が一定数毎年存在します。人間とはなんとも怠惰な生き物なのでしょうか。
およそ10人に2人の割合で受験料を支払ったにもかかわらず、何らかの理由で受験をしないのです。下の図をご確認ください。毎年の合格率と実受験者合格率の幅が見事に毎期一定です(下図は率なので、両者の差は10%です)。パレートの法則どおりです。
そもそも受験をしなかったこの人達を分母から除けば、合格率は約40%前後になります。これを実受験者合格率と呼ぶことにします。

受験者データの分解 ~2016年
試しに、2016年のデータでそれを確認してみましょう。2016年は全体の受験者(申し込み者)が約34万人いました。そのうち、なんと7万人も未受験者です。1回の受験料は2,570円(税込み)ですので、驚くことに商工会議所は未受験者から年間約2億円も支援金を得ていることになります。それ込みの検定受験ビジネスなのは百も承知なのですが、なにもしなくて2億円は大きいですね。検定ビジネスしようかな。。。(冗談です)
加えて、合格者は9万人(合格率は28%)ですが未受験者が7万人もいるので、その方たちを除いた実受験者合格率は35%となります。

日商簿記検定の3級はきちんと時間を確保し、誤った勉強法を取らなければほぼ確実に合格できる
上記のデータは非常に面白いデータではないでしょうか。
おそらくこうもいえそうです(下図参考)。
- つまり、実際に受験した人のうち、さらに、インプットの段階で試験範囲すべて終えられなかった人も一定数いるはずです。例えば、パレートの法則を当てはめ、受験者の全体の2割は試験範囲すべてのインプットが終えられなかった人と仮定します。なお、インプットの時間がとれない理由にはたとえば、仕事が忙しかったとか、他の授業が忙しかったとか、バイトが忙しかったとかさまざま考えられます。
- さらに、すべての試験範囲のインプットを無事に終えた人のうち、試験の傾向と対策を適切にとれなかった人も一定数いるでしょう。例えば、とっても細かい論点をごりごりやって過去問を一切といていない人とか、過去問を解いてはいるけど、間違ったところをちゃんと潰せなかった人とかです。おそらく適切に傾向と対策を理解し、実行に移せる人は全体の20%程度ではないでしょうか。ここは意見がわかれるとは思いますが、一旦20%程度と仮定します。
このことから、読者の方が絶対に合格したいなら、専門学校のすべての授業に参加しさえしていれば概ね合格率は50%程度(インプットができれば21万に入れる)にあげられることがわかります。仮に独学でやっていても、試験範囲すべてのインプットを市販のテキストでやり、市販の問題集と市販の過去問をこなし、当日会場に足を運びさえすれば、 50%の確率で合格できます。
そして、対策が確実にできなかった人も諦めてはいけません。対策が☓だとしたら、話になりませんが、▲くらい、つまり、大きな論点はしっかりやったが中くらいから小さい論点までは対策できなかった人のうち、運がよければ合格できるでしょう。資格試験では問題を一から作ることはまれで、過去問を使いまわすことが一般的に行われていますので、運良く解いたところの論点に当日出会えるかもしれません。
このように、日商簿記検定の3級はきちんと時間を確保し、誤った勉強法を取らなければほぼ確実に合格できます。

私の場合 ~専門学校を選びました
私の体験をご紹介すると、私は独学ではなく、専門学校の講座で勉強しました。おいおい、独学ではないのかとずっこけた方いらっしゃると思います。
簿記3級は専門学校でも独学でもそんなにかわらないことは上記でお話ししました。ですので、私が簿記検定3級を専門学校の講座で勉強した理由は、3つあります。
- まず、最初から2級まで取得予定だったこと(これが一番の理由)
- 次に、簿記2級の工業簿記が独学では非効率と思ったこと
- 最後に、確実に取得したかったこと
逆にいえば、独学でやったはずの状況とは、簿記3級だけ取得予定の場合です。
理由は単純で、市販のテキストをみても、簿記3級の合格率を聞いても、簿記3級がそこまで難しいとは思わなかったし、あとで詳細をお話しますが、時間を確保して誤った勉強方法を取らなければほぼ確実に合格できる試験だからです。
専門学校を選んだ理由① ~2級まで取得予定だったこと
まず、3級だけなら独学で済ませたと思います。 理由は3級の市販のテキストを見たときにそんなに難しくないなと思ったという単純な理由からです。3級だけを取得しようとされているかたは、まず市販のテキストをご覧になることをおすすめします。
当時、私が通った大学では、専門学校の講座は3級と2級対策講座が開講されていました。私は2級まで取得するつもりでした。2級は独学でやるには非効率だし、投資対効果もあまり良くないと感じました。ですので、専門学校の講座に確か3級で1万円(期間は1ヶ月程度)、2級で5万円程度(期間は3ヶ月程度)支払って通いました。
専門学校を選んだ理由② ~ 2級の工業簿記が独学では非効率と思ったこと
次に、2級のテキストも見てみました。まず、2級は2冊に分かれていました。商業簿記と工業簿記です。商業簿記は3級の延長線上で、難易度が上がっているのだろうなと安直な考えをもち、これも独学でなんとかなりそうだと思いました。
しかし、工業簿記では連産品とか仕掛品とか副産物とか個別原価計算とか総合原価計算とか、とにかく見たことも聞いたこともないフレーズや単語だらけでした。
そもそも大学生だった私は、工場の原価計算を自分の頭で考えるための知識が何もありませんでした。なので、「独学はできるだろうけど、時間かかってもったいない。それならバイトして専門学校の口座に通ったほうが早いな」と思いました。
どいうことかというと、5万円ってだいたい時給1000円で50時間です。大体、簿記2級は200~250時間必要と言われており、50時間分も効率的に勉強でき、途中で挫折するリスクも回避できるなら、バイトしてでも専門学校にいったほうがいいですよね。
専門学校を選んだ理由③ ~ 確実に取得したかったこと
最後に、独学の最大の敵は自分となることです。経験上、自分と戦うことが避けられるならそれに越したことはないと思います。自分って最強のラスボスなのでとってもエネルギーを使います。特に、簿記検定の資格取得によっぽどの必要性がある人以外は、簿記の勉強はやりたくない勉強のうちの一つなはずです。友達と遊んだり、飲みに行ったりしたほうが楽しいに決まっています。
それゆえに、私はいま、このつまらないとか面白くない簿記の勉強をアニメーションで面白いものに変えられないだろうかと試行錯誤しています。
独学は自分ですべてスケジュールを決めなければなりません。当時私は、勉強をするやり方みたいなノウハウがある方でも、勉強自体が習慣になっているわけではありませんでした。高校までひたすらサッカーボールを蹴って過ごしていたため、いわゆる受験テクニックとか勉強の方法みたいなものを身に着けていませんでした。
ですので、専門学校の先生にわからないことをすぐ聞ける環境が必要でした。大分という田舎の大学生にとって、疑問をすぐに解消できる環境を自分で作るのは困難でした。
体験談のまとめ
私は確実に簿記2級まで合格したかったし、万が一不合格になり大学の4年間しかない貴重な時間を同じ勉強に費やすことになることだけは避けたかったです。簿記2級の合格率は平均で約20%程度です。ですので、自分を全く信用せず、決められたカリキュラムで確実に専門学校の先生の力を借りて、勉強するほうが確実に合格できるだろうと思いました。
ということで、2級まで取得予定だったこと、2級の工業簿記が独学では非効率と思ったこと、確実に取得したかったことの3つの理由から私は独学ではなく、専門学校の講座で勉強しました。
正しい簿記検定3級の勉強法とは
必要な勉強時間は概ね50時間から100時間といわれています。この程度の勉強時間なら、1ヶ月程度でスケジュールを組むのが理想的だと思います。
毎日1時間、勉強時間が取れるひとなら、平日は20日あるので合計20時間になります。休日は8日あるので、3時間から4時間程度まとめてとれば、24時間から32時間確保できます。これで合計44時間から52時間になります。
そして、この50時間の配分が大切なところです。簿記は何と言っても「仕訳」が命です。取引を仕訳に変換できたあとは単に数字を勘定に転記していったり、足したり引いたりするだけです(掛け算すら使いません)。
ということで、仕訳問題集を作りましたので、ご利用ください。
1. 商品売買
●すべて(51)
●仕入-3分法(18)
●売上-3分法(14)
●返品・値引(4)
●諸掛(6)
●商品券(2)
●クレジット売掛金(1)
●記帳方法(6)
2. 手形と電子記録債権・債務
●すべて(21)
●手形債務の発生と精算(4)
●手形債権の発生と回収(3)
●電子記録債権・債務(4)
●その他(10)
3. 貸倒
●すべて(10)
●貸倒引当金繰入(3)
●貸倒の発生(5)
●貸倒債権の回収(2)
4. 現金・預金・当座預金
●すべて(17)
●現金(2)
●小口現金(2)
●現金過不足(5)
●普通預金(4)
●当座預金(2)
●当座借越(2)
5. 貸付・借入
●すべて(11)
●証書貸付・証書借入(7)
●手形貸付・手形借入(4)
6. 有形固定資産
●すべて(16)
●購入(9)
●減価償却(2)
●売却(5)
7. その他の債権・債務
●すべて(6)
●仮払金・仮受金(3)
●差入保証金(2)
●貯蔵品(1)
8. 純資産
●すべて(4)
●会社設立(1)
●増資(1)
●配当金の支払い(2)
9. その他の費用・収益
●すべて(24)
●その他の費用(21)
●その他の収益(3)
10. 法人税・消費税
11. 決算整理仕訳
●すべて(25)
●費用の未払計上(3)
●収益の前受計上(3)
●費用の前払計上(2)
●収益の未収計上(4)
●売上原価算定(3)
●減価償却(2)
●貸倒引当金繰入(3)
●損益の振替(1)
●当座借越(3)
●法人税等(1)
全範囲
●すべて(189)
●商品売買(50)
●手形と電子記録債権・債務(21)
●貸倒(10)
●現金・預金・当座預金(17)
●貸付・借入(11)
●有形固定資産(16)
●その他の債権・債務(6)
●純資産(4)
●その他の費用・収益(24)
●法人税・消費税(5)
●決算整理仕訳(25)
この仕訳問題集の意図と目的はこちらの記事にまとめました。
上記を利用したり、書籍の問題集を使ったりして、各取引における仕訳のイメージが大体つけられればあとは問題の形式になれるだけです。
全体50時間の配分のイメージはこんな感じです。
- 最初のフェーズ(10時間程度)は、インプットにあてましょう。もちろん、その都度確認のための演習問題も含まれます。
- 次のフェーズ(20時間程度)は総合問題を解く時間にあてましょう。問題の形式が5つあります。それぞれの傾向と対策のイメージがつかめればOKです。
- 最後のフェーズ( 20時間程度)は過去問対策をしましょう。ここでの時間でインプットの漏れが確認できます。
各フェーズでの注意点などは以下の通りです。
フェーズ①(インプット段階) ~残り総勉強時間50時間程度
学習の初期の段階で、全体像を把握することは、極めて重要です。
そこで記事の冒頭でご紹介した、自著の登場です。
本書を一読すれば、頭の中にイメージが作られ、日商簿記2級以降の学習や、将来の会計・簿記の学習効率が一段と上がるはずです。
公認会計士試験を在学中に一発で合格した私が断言します。だまされたと思って、一読してみてください。周りに一気に差をつけられます。
次にこの問題集を使って、スキマ時間に復習する。ポイントは、全体感の把握です。全体像を理解し、苦手意識を早期になくす。
簿記3級の基本的な仕訳問題一覧
ここまでくればほぼ完了です、仕訳になれちゃうと、あとは商工会議所がつくる問題の「クセ」に付き合うだけです。クセは強めです、クセを理解すること自体は本質的ではないのですが、資格取得とは幸か不幸かそういうものです。
フェーズ②(アウトプット段階) ~残り総勉強時間40時間程度
- 市販テキストの巻末の総合問題をまず1回転させる。間違ったところにはチェックをし、なんで間違ったのかを考える。
間違う場合、その理由はそもそも知らなかった、知っていたけど思い出せなかった、思い出せたけど計算を間違えた、計算はあっていたけどなんらかの凡ミスをした、という風に大きく④つにわけられるので、間違った理由に応じて次の対応を取りましょう。
- そもそも知らなかった:テキストの巻末問題であれば、知らない問題がでることはまずないはずなので、②にいこう
- 知っていたけど思い出せなかった:なぜ思い出せなかったのか、そもそも覚えていたことはなんだったのかを再度確認しよう。間違ったところを「簿記検定3級対策(準備中です)」 またはテキストでチェックしよう
- 思い出せたけど計算を間違えた:下書き用紙などに計算の過程をしっかりかこう。暗算は危険だ
- 計算はあっていたけどなんらかの凡ミスをした:実は簿記検定は凡ミスが原因で不合格になることが多い。理由は、70点とっていれば合格できる試験だからだ。みんなが正解までたどり着いた問題を間違えば、一気に合格から遠ざかるだろう。逆に、みんなが間違った問題では差がつかない。自分がやってしまう凡ミスの傾向(クセ)を本番までにつかんでおくことはとても大事なことだ
フェーズ③(仕上げ段階) ~残り総勉強時間20時間程度
- もう一度、市販の総合問題の間違ったところだけ解こう。それでも間違ってしまったら、上記の4つをチェックしよう
- 過去問対策をしよう。本試験形式の総合問題でもよい。これらは過去問の傾向を踏まえ、専門学校の先生方が練にねった問題構成のはずだからだ。
試験当日(これが最も大切だ!)
- 試験会場に必ず時間通りにいきましょう!前述したように、世の中の2割の人は申し込んでも会場に行っていないのです。
万が一、良い準備ができなかったとしても、それでも当日は会場に行くことをおすすめします。みずからチャンスを放棄する必要はまったくないでしょう。結果は後からついてくるので、どんなときも自分を信じて最後まで決して諦めないことは精神衛生上も良い事だと思います。
どうしても1週間で合格したい ~どうすればよいか
50時間の勉強時間を確保し、わからないときに聞ける友人を確保する、この2点が必要です。
仮に1週間しか時間がないが読者の方が大学生だった場合は、1日7時間程度やれば合格できる可能性があります。ただし、そばに疑問点を聞けるひとがいない場合はおすすめできません。この7時間には疑問点を解消時間が含まれていないからです。
一般に、別の分野や他の既知の知識と結び付けられたりするときに人はわかったと感じることが多いのではないでしょうか。
なので、1週間ずっとぶっ続けて50時間、簿記のテキストや過去問ばかりやっていても、吸収できるスピードは1ヶ月じっくり50時間やった人にはかなわないでしょう。1ヶ月かけてやったひとは、勉強していない時間にも無意識に他の情報と簿記で学習した情報を結びつけているからです。
まとめ
ポイントをまとめると、
- 3級までなら独学でもいい
- 2級まで取得予定の人は、バイトしてでも講座代を稼いで専門学校にいくべし(そのほうが独学より経済合理性(コスパ)が高い)
- 検定ビジネスは儲かるかも(冗談です。「資格が役に立つ」という啓蒙活動にもお金を掛けないといけません)
- 効率的にインプットしたいなら、自信をもっておすすめする自著「【会計・簿記入門編】読まないで会計思考を身に付ける方法: Accounting Pictures Book
」をざっとまずは見るべし!

