株式会社ステップ[9795]の株価(企業価値)を財務分析してみる

こんにちは、小松啓(@EUREKAPU_com)です(プロフィールはこちらからどうぞ)。

つい先日、以下の「業界地図」の書籍2冊を眺めていると、目を引く会社を教育関連銘柄で見つけました。株式会社ステップ(以下、ステップとします)という企業です。

どうやら、神奈川県を中心に展開し、小学生と中学生を主に対象とした塾を展開しているとのこと。私自身、子供ができ、神奈川県に住んでいることから、都会の塾というのに関心があります。私が子供のときはボールしか蹴っていなかったので、必要ないと思っていたりもしますが、子供が将来行きたいとなれば、調査するのは親の仕事です。

※なお、この記事は作成途中で公開していますので、徐々に内容を加筆・修正します。

「会社四季報」業界地図 2018年版
日経業界地図 2018年版

会計系のコンテンツをつくっていると、「結局、その会計とか簿記の知識ってどう使えばいいの?」という問いが必ずおきます。

せっかくおもしろい企業を見つけたので、私がつらつらと考えたことをメモすることで、財務分析ってそういう風に考えたりもできるのね、と感じてもらえたら幸いです。

※なお、銘柄を推奨するものではないので、投資はあくまで自己責任でお願いします。

株式会社ステップでまず目を引いたところ

業界地図をみていて、おや?と思ったのはその利益率の高さです。

例えば、上場している同業他社として、「中高受験」では「早稲田アカデミー」、「学究社」、「進学会」、「市進ホールディングス」、「ウィザス」、「秀英予備校」が挙げられていました。

私は大分出身なので、どれも初めて聞く会社ばかりでした。

ステップの経常利益率の高さを上記の会社とくらべてみると、経常利益率25%という数字が目立ちます。

そこで、今度は、この経常利益率が単年度だけのものかどうか(一過性)、年度によってはばらつきがあるのかどうかを調べてみることにしました。

結構、企業のおかれた外部環境やビジネスモデル次第では、バラバラだったりします。

私はよく、20年くらいの長期で売上高、経常利益、経常利益率を並べてみることが多いです。

20年位長期で見れれば、ビジネスの転換点などがわかったりして面白いのです。

以下の図をみて、「おおお~、一環して売上高は成長しているし、経常利益率も成長しているのか~」と思いました。

偉大な投資家である、ウォーレン・バフェットもこういっています。

永続的競争優位性をもつ企業を探すことは、”一貫性”を見つけるゲームに参加することだ

メアリー・バフェット 「バフェットの財務諸表を読む力」徳間書店 P53

一貫して同業他社よりも高い利益率であり、年々改善しています。どういった要因でしょうか。売上高をまず分解し、その要因を理解していきます。

ステップの売上高を数量(生徒人数)と単価(一人あたり授業料)に分解

次に、私は売上高を数量と単価に分解してみることにしました。

ステップにとってお金をもらう「顧客」は生徒(厳密には、その両親ですが)です。

売上高の成長は、生徒数が伸びているのか(数量)、もしくは生徒の授業料が伸びているのか(生徒一人あたり単価)、もしくはその両方なのか調べてみることにしました。

生徒数はステップのIR資料「決算説明会資料」から拾ってきました。売上高をこの生徒数で割れば、生徒一人あたり単価が算出できます。
http://www.stepnet.co.jp/company/data/17_kessansiryo.pdf

生徒一人あたり単価はほぼ横ばいで、生徒数が伸びていることがわかりました

生徒一人あたり単価は年間約40万円であり、一月あたり3万3000円ですね。概ね、ステップのホームページにある月謝の金額と整合していることもついでに確認しておきました。

このように、財務諸表の数字は単独でみてもあまり妄想力がつかないので、他の非財務データの数字と比較してみて、数字の意味を確かめることも結構重要です。

ステップの売上高を数量(校舎数)と単価(一校あたり売上高)に分解

先ほどのグラフから、生徒人数が伸びていることがわかりました。

感覚的にも、生徒一人あたりの単価(40万円)をあげる(国社数だけの生徒に英語を受講してもらうとか)よりも、校舎が商圏としている地域の学生を新規に獲得したほうが効率的な経営という気がします。

塾に通った生徒はよっぽどのことがない限り、途中で解約することはないだろうし、一旦、一人獲得すれば、数年は会社にキャッシュフローをもたらすことになる優良顧客になるからです(言い方があまりよくないですね)。

つまり、ステップにとっては、校舎(とその土地)という箱を借りるか、購入するかして、その箱の稼働率をできるかぎり高く維持することがポイントになりそうです。

生徒は中学卒業か高校卒業のタイミングで退会してしまうので、校舎の稼働率を高く維持し続けるには、新規の生徒を獲得し続けなければなりません。あとで、獲得コストにも注目してみますが、まずは「校舎数」に注目してみます。

以下の図は2017年の売上高(約105億円)を校舎数に着目して分解した図です。

校舎数と一校舎あたりの売上高の推移を確認してみます。

校舎数も伸びていますが、一校舎あたりの売上高も伸びています

一校舎あたりの売上高は、一校あたりの生徒数と生徒あたりの平均単価に分解できます。先ほど確認したように、一生徒あたり平均単価は約40万円で横ばいでした。

そうすると、一校あたりの平均生徒数(約182人)を分解する必要がありそうです。

例えば、一校あたりの平均生徒数(約182人)は、一校あたりの平均収容可能人数(250人から300人くらいでしょうか?)と平均収容率(稼働率:72%から60%くらいでしょうか?)に分解できそうです。IRの方に確認してみましたが、校舎によっては400人収容可能な校舎もあるようなので、平均するとおおむねこの上記の数字くらいではないでしょうか。

一校あたりの平均収容可能人数とは、いい換えれば、ビルの大きさであり、平均収容率とはどれだけ授業の席を埋められたかです。例えば、サッカーのスタジアムでいえば、最大収容人数が5万人で、1万人しか観客動員できなければ、収容率は20%しかありません。

一校あたりの平均生徒数をいかに伸ばせるか、言い換えれば、平均収容率(稼働率)をいかにあげるかがポイントといえそうです。

ちなみに、平均収容率(稼働率)は開示されていません。ここは推測で一校舎あたり約250人から300人収容できるとしています。IRの方に電話して確認したところによれば、400人収容できる校舎もあるようなので、大体一校舎あたり約250人から300人収容できるでしょう(ここはざっくりとイメージするためなので、厳密な数字が気になりますが、教えてもらえないでしょうし、思い切って過程の数字をおいておきます。)

2017年9月期の決算開示資料を見ていると、「生徒数の動向(2017/10月現在/小中学部)」というページがありました。

これには「経過年数区分」という項目があり、開校年数別の生徒数が開示されていました。このデータに、経過年数区分別の一校舎あたりの生徒数を加えるました。

これをみると、経過年数が長期になればなるほど、一校舎あたりの生徒数が増加していることがわかります。

言い換えれば、年数が経てば、塾の認知度が上がり、近所の口コミも累積され、信用されることになり、徐々に稼働率があがっていくということがわかります。

2017年に開校した校舎については2016年に開校した校舎と比べ、一校あたりの生徒人数は+17人の増加ですので、うまくいっているようにも見えます。

塾というのは、一旦通いだすと、途中で解約することはあまりないはずなので、開校後、早期に生徒を獲得できれば、はやく投資が回収できます。

また、小学生のうちから塾に通う生徒は中学にあがってもそのまま通い続ける可能性は高いだろうし、高校部までそのまま通い続けることになるかもしれません。学校からすれば、追加のコストをほとんど支払わずに、収益を獲得できることにつながります。

塾経営のポイントは4つくらいありそう

塾経営のポイントは、ざっくりいえば4つくらいありそうです。

  1. 早期に新規に開校した校舎の収容率をあげる
  2. 小学生や中学1年生など、卒業まで長くいてもらえそうな生徒を出来る限り早期に獲得する
  3. 途中で退会したり、解約したりを少なくする
  4. 「卒業」という概念をなくす

1.早期に新規に開校した校舎の収容率をあげる

これはさきほどの開校経過年数あたりの平均生徒数の図をみるとわかりますが、年数が経過すれば口コミなどで生徒を獲得できますが、新規開校と同時に10年経過後くらいの生徒数を獲得できるにこしたことはありません。

これには、積極的に情報発信していくなど地道な宣伝活動による認知度向上が欠かせません。

校舎数は100校を越しますが、商圏ごとに専用のWebページや会報を設けるなどして、信頼感を醸成することが大切になりそうです。

2.小学生、中学生などを早期に獲得

中学3年生や高校3年生を獲得するよりも、小学生のうちから塾にきてもらった方がよいです。

入会後、途中で解約がなければ、企業は追加のコストを払わずに、年間平均40万程度のキャッシュフローを獲得できるからです。

よって、在籍年数が長くなる見込みが高い、小学生、中学1年生を早期に獲得した方が企業にとってはよさそうです。

3.途中解約を少なくする

一旦塾に入会した生徒はそんなにやめないでしょうから、これはそこまで重要な要素ではないかもしれません。

先生や教材の質を常に担保し、向上することが必要だと考えられます。

4.卒業という概念をなくす

たとえば、「スクー」のように、会計や経営やプログラミングなど、社会人になって必要な知識などを卒業生に提供するなどです。

自社で提供が難しい場合でも、会計であれば大原やTAC、プログラミングであればTechacademyなど他社との提携をしても良いかもしれません。

もっといえば、年間10億円程度の経常利益のうち、新規開校のペースを年間4校から1校へらし、その投資分の約2億円程度で成績優秀な生徒に対して、シード投資などをしても良いかもしれません。もしかしたら、その投資を受けた生徒が将来的に上場までいけば、キャピタルゲインが発生するかもしれません。

塾の役割として学校で勉強についていけなくなった生徒に対し、教えるという大切な役割もあります。

しかし、優秀な生徒に対しては、金銭的な援助をしてあげ、もっと突き抜けさせることも、これからの塾には求められる役割かもしれません。

(続く…)

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